福岡高等裁判所 昭和42年(く)62号 決定 1967年10月18日
少年 G・R(昭二三・四・一生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の趣意は、要するに、原決定は強姦罪についても審判の対象としているが、右罪については審判中告訴の取下がされているのであるから、右罪を審判の対象としたのは重大な事実の誤認であり、かつ強姦罪は証拠上強制わいせつ罪を構成するのにすぎず、この点も事実の誤認であるし、恐喝も悪質なものでないからその他情状を考慮するとき原決定の処分は著しく不当であり、これが取消を求めるというのである。
しかし、親告罪における告訴は訴訟事件に過ぎないから、告訴がなくてもその行為をした少年について家庭裁判所は少年法第三条第一項第一号にいう罪を犯した少年として審判権を有するのであり、原裁判所が本件強姦未遂(所論は強姦というのであるが審判で認定したのは強姦未遂である)の事実について告訴の取下があつたにもかかわらず審判の対象としたことに毫も違法な点はなく、本件少年保護事件記録、少年調査記録によると、少年が原決定非行事実(1)に認定したとおり強姦未遂罪を犯したものであることは明らかであるから、結局所論中事実誤認の主張は理由がなく、右各記録に現われている本件各非行の動機、態様、罪質、少年の性格、素行、経歴、非行歴、家庭環境等にてらすと、少年の非行性はかなり深化していることがうかがわれ、少年の健全な育成を図るためには収容保護もまことにやむを得ないと思料されるので少年を特別少年院に送致する旨の原決定の処分は相当であり、右処分が著しく不当であるとの所論も採用できない。
よつて、少年法第三三条第一項により本件抗告を棄却し、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 厚地政信 裁判官 淵上寿 裁判官 武智保之助)